相続手続きサポート / 遺産分割の全パターンを図解・金額で整理
遺産分割パターン全解説14パターン
相続人の構成パターンごとに、法定相続分・取得金額・遺留分・相続税の目安を、遺産額 2,000万円 / 1億円 / 3億円 の3水準で解説。川畑詞歳行政書士事務所 研修用
相続の基本ルール
この資料を読む前に相続人になれる人(法定相続人)
どの順位にも該当する人がいなければ「相続人不存在」となり、特別縁故者への分与や国庫への帰属という流れになります(パターンC3)。
内縁の妻・連れ子(養子でない)・元配偶者は相続人になりません。
法定相続分の3つの基本形
遺言がなければ、相続人全員の「遺産分割協議」で分け方を決めます。話し合いがつかなければ法定相続分が基準になります。
相続税の2つの大前提(2026年9月時点)
① 基礎控除 = 3,000万円 + 600万円×法定相続人数
| 人数 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 控除額 | 3,600万 | 4,200万 | 4,800万 | 5,400万 | 6,000万 | 6,600万 |
遺産総額が基礎控除以内(負債・生前贈与加算などがない場合)なら、相続税の申告は原則不要です。
② 配偶者の税額軽減(配偶者控除)
配偶者が取得した財産は、1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のうち多い金額まで相続税がかかりません。
→ 遺産1億円のケースでは、配偶者が法定相続分どおり取得すれば配偶者の相続税は0円になる構成が大半です。
相続が発生する全パターン
A:配偶者がいる / B:配偶者がいない / C:代襲・再婚・不存在遺産額別・全体の見方
2,000万円 / 1億円 / 3億円 で何が変わるか遺産 2,000万円
- どのパターンでも基礎控除(3,600万円〜)以内のため、相続税の申告は原則不要
- 中心になるのは戸籍収集・相続人の確定と、預貯金の解約・払戻し、自動車・株式など名義変更の手続き
- 相談者に「税はかかりませんが、放置すると相続人が増えて手続きが複雑になります」と伝える
- 実務目安:当事務所のライト〜スタンダードプラン(8万円〜15万円)相当の範囲
遺産 1億円
- 基礎控除を超えるため、相続税の申告が必要になる(法定相続人12人以上でなければ非課税にはならない)
- 配偶者がいれば配偶者控除(上限1.6億円)で配偶者は実質0円。子などの負担は数十万〜数百万円の目安
- 分割の仕方で税額が変わる(配偶者への配分をどうするか)→ 税理士連携の型を作る
- 相続税申告期限は「相続開始の翌日から10ヶ月以内」、相続登記義務は「開始を知った日から3年以内」
- 実務目安:スタンダード〜フルサポートプラン(15万円〜25万円)+税理士費用の見通しをご案内
遺産 3億円
- 相続税の総額は約5,000万〜9,200万円規模(パターンにより異なる)。配偶者がいる場合は1.6億円枠の活用が鍵
- まとまった不動産がある場合は小規模宅地等の特例(最大80%減)など特例の検討が欠かせない
- 配偶者が全額を相続すると、配偶者死亡時の「2次相続」で子の税負担が増える → 一次・二次の通期設計が重要
- 生前対策(贈与・遺言・信託・保険の活用)を含めた総合的な相続対策としてご案内し、税理士・司法書士へ確実に橋渡し
遺留分の計算方法
民法1042条〜1048条(2019年7月1日施行の改正法)- STEP 1
遺留分を算定するための財産の価額を出す
= 相続開始時の財産 + 算入される生前贈与 - 債務の全額
算入される贈与:相続人への贈与は相続開始前10年以内の婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与(特別受益)、相続人以外への贈与は1年以内のもの。当事者双方が遺留分権利者に損害を与えると知ってした贈与は期間を問わず算入(民法1043条・1044条)。
- STEP 2
総体的遺留分(遺留分権利者全体の割合)を決める
直系尊属のみが相続人 → 1/3 / それ以外 → 1/2
兄弟姉妹(甥・姪を含む)には遺留分がありません(民法1042条1項)。
- STEP 3
個別的遺留分(各人の割合)を出す
= 総体的遺留分 × その人の法定相続分
例:配偶者+子2人 → 配偶者 1/2×1/2=1/4、子 1/2×1/4=1/8(民法1042条2項)。
注意:配偶者+兄弟姉妹の場合、兄弟姉妹に遺留分がないため、配偶者の遺留分は1/2です(1/2×3/4=3/8ではない)。配偶者のみの場合も1/2です。 - STEP 4
遺留分額を出す
= STEP1の財産の価額 × 個別的遺留分
- STEP 5
遺留分侵害額(実際に請求できる金額)を出す
= 遺留分額 - 本人が受けた遺贈・特別受益 - 遺産分割で取得すべき財産 + 本人が承継する相続債務
請求は金銭で行います(民法1046条)。時効:相続開始と侵害を知った時から1年、知らなくても相続開始から10年(民法1048条)。請求の交渉・調停は弁護士の業務のため、当事務所は資料整理と橋渡しを担当します。
計算例1:「全財産を長男に相続させる」遺言
家族:配偶者・長男・次男/相続開始時の財産 8,500万円/長男への5年前の住宅資金贈与 1,500万円(特別受益)/債務なし
| STEP1 | 8,500万円 + 1,500万円 - 0円 = 1億円 |
|---|---|
| STEP2 | 配偶者と子 → 総体的遺留分 1/2 |
| STEP3 | 配偶者 1/2×1/2=1/4、次男 1/2×1/4=1/8 |
| STEP4 | 配偶者 1億×1/4=2,500万円、次男 1億×1/8=1,250万円 |
| STEP5 | 2人とも取得ゼロ → 配偶者 2,500万円、次男 1,250万円 を長男に金銭で請求できる |
計算例2:請求する側も贈与を受けていた場合
例1で、次男も7年前に開業資金 500万円(特別受益)を受けていた場合
| STEP1 | 8,500万 + 1,500万 + 500万 = 1億500万円 |
|---|---|
| STEP4 | 次男 1億500万×1/8=1,312.5万円 |
| STEP5 | 1,312.5万 - 500万(受けた特別受益)= 812.5万円 |
請求する人が受けた贈与は、STEP1で財産に加え、STEP5で差し引きます。
遺留分 計算ツール(研修用)
※「取得済みの額」には、その人が受けた遺贈・特別受益・遺産分割での取得額の合計を入れます。承継する相続債務の加算は省略しています。研修用の概算のため、実際の請求額は弁護士にご確認ください。
遺留分まとめ
相続人に最低限保障される取り分※ 配偶者+兄弟姉妹(甥・姪)のパターンでは、配偶者の遺留分は1/2です。遺留分は兄弟姉妹(およびその代襲である甥・姪)には認められません。遺言で兄弟姉妹に財産を残さない旨を定めても遺留分侵害の問題は生じないため、配偶者や縁者への配分の自由度が高いパターンです。
遺産分割協議は必要?早見表
パターン別・手続きの要否遺産分割協議が「不要」なケース
- 相続人が1人だけの場合(配偶者のみ:A4、子1人のみ、直系尊属1人のみなど)
- 遺言書で分割方法が指定されており、相続人全員がその内容に従う場合(遺言執行で手続きが進む)
- ※ 遺言があっても「全員の合意で異なる分け方」にする場合は協議書が必要
協議で押さえるポイント
- 協議は相続人全員の参加(本人または代理人)が要件。1人欠けた協議は無効
- 遠方の相続人は郵送で署名・押印、海外在住者は大使館等の証明付き委任状で対応
- 合意内容は遺産分割協議書(全員の実印+印鑑証明書)に書面化し、金融機関・法務局に提出
- もめる場合は当事務所が相続人調査・財産目録の「土台づくり」を行い、調停が必要なら弁護士へ橋渡し